記憶力を上げるために必要な基礎知識とトレーニング方法

 

 

記憶力を上げるために必要な基礎知識とトレーニング方法

 

記憶力に自信がない。すぐに物事を忘れてしまう自分に嫌気がさしてる。そんな方の為に記憶力を高める方法をお伝えしたいと思います。

 

 

 まず、記憶力を向上させるためには記憶のメカニズムを理解することが大切です。どのようにして脳内に物事が記憶されていくのかを知ることで、より記憶力向上に繋がります。

 

 

・記憶のメカニズム

 脳は何百億個以上もの神経細胞ニューロン)同士が、いくつものシナプス神経細胞間の接合部)でつながったネットワークで構成されています。そしてこのニューロンシナプスのつながり方が記憶に関係していると言われています。

 

 記憶したり考えたりするときにはニューロンからインパルス(電気信号)が流れシナプスを経て各細胞に情報が伝わります。インパルスが強いとニューロンを結ぶシナプスも太くなり情報伝達がよりスムーズに行われるようになります。

 

 今読んでいるこの文字は大脳皮質の後頭部(後頭葉)に伝わっていて、周囲の音は大脳皮質(大脳の表面層)の両サイド(側頭葉)に届いています。どれも脳神経細胞ニューロン)を刺激しています。

 

 このニューロンの数は、生まれたときをピークとして加齢とともに減っていくものというのが長年の定説でしたが、近年の研究により後天的に増えることが判明しています。つまり、ニューロンを増やしシナプスを増やすことで脳はどんどん活性化できることになります。 

 

 人間の脳は記憶を薄れさせる役割もこなしています。記憶が完璧だと不都合が生じるからです。一度取り込んだだけでは、しばらくすると忘れてしまう。それは、記憶力が悪いのではなく、様々な環境に適応するための柔軟性や発想力を持って生きるためなのです。

 

 

 

 

記憶の入り口【短期記憶】

 私たちは、視覚、聴覚、臭覚、触覚など外部から様々な刺激を受けながら生活しており、その情報が一気に脳のあちこちに届いてパニックにならないように、一度「海馬(かいば)」を通り整理されるようになっています。

 

 海馬は例えると記憶の門番の役割を果たしています。すべてを素通りさせれば、ものすごい情報が一度に脳のあちこちに届くことになり、頭はパニックになるので、そうならないよう海馬が重要な情報かそうでないか「交通整理」をしてくれているのです。

 

 記憶は《海馬》⇒《前頭葉》⇒《側頭葉》の順に伝わり定着します。

海馬の記憶はすぐになくなりますが、前頭葉を通して側頭葉に移された記憶はすぐにはなくなりません。しかし、側頭葉の記憶も放置していたら自然に消え、復活が困難となります。側頭葉の記憶を定着させるには、何度か繰り返さなければいけません。

 

 たとえば知らない単語を見たとします。

 海馬は一度単語を受け取り、前頭葉に「知ってる?」と問い合わせをします。前頭葉は側頭葉の中を調べてみるが見あたらないので、海馬に「知らない」と答え、とりあず「わからない単語」という情報を側頭葉に保管することにします。海馬は揮発性メモリのようなもので、しばらくは頭に残りますが、時間がたつと記憶は薄れます。これが海馬による記憶です。

 

 ただ問題なのは、まだ海馬に記憶が残った状態で復唱したとしても、海馬から「まだ覚えているよ」と門前払いされて側頭葉には届きません。つまり、一定の間を置かないと復習は効果が出ないのです。かといって間を置きすぎても、側頭葉から跡形もないくらい消えてしまっていたら意味がありません。繰り返し学習は大切ですがタイミングが早すぎても、遅すぎてもいけないのです。

 

 

 

 

記憶の定着 【長期記憶】

 命の危険を感じたり、なにか高額当選したり、わかりやすく強い感情の記憶は前頭葉に情報を受け取ってもらいやすいです。やみくもに勉強するのではなく、時に休み、音楽や絵画を見て右脳を刺激したり、気分を変えるために場所を移動するなど適度に環境を変えていくことも大切です。 

 ドイツの心理学者エビングハウスによる、時間の経過とともに記憶がどれくらい忘れられていくのかという「エビングハウス忘却曲線」という実験によると、意味のないアルファベット3文字をいくつも憶え、時間とともに記憶がどれくらい減っていくか曲線で表しました。そこで記憶は4時間もすると半減し、1週間後には8割以上も忘れてしまうことがわかったのです。 

 暗記するには就寝前に学習する方が良いのは、寝ることで忘却曲線がなだらかになるからです。そして曲線が半分以下にならない頃に再度復習すると、記憶量の値はぐっと増え、また新しい忘却曲線がはじまる。だんだん、曲線はなだらかになり、次に復唱するまでの時間が長くなる。これを何度か繰り返すうちに記憶はしっかり定着します。

 

 

 このように記憶のメカニズムを理解して、右脳を意識して鍛え記憶するように心がけこともひとつの記憶力向上の手段です。速読にしても、記憶にしても、右脳を使うことを知らずに「記憶力がないから」「頭が悪いから」と自ら限界をつくりネガティブな考えのままでは本当の力が発揮されません。

 

 物事を忘れていく要因の1つには加齢もあります。年を取ると、神経細胞は傷つき、弱まります。そして神経細胞間のシナプスのはたらきが弱まることで、記憶を保っておくことが徐々に難しくなるのです。さらに加齢によって細胞の数が減り、脳自体の大きさが少しずつ縮むことにより物事を忘れていきます。

海馬は10年ごとに神経細胞を全体の5%ずつ失っていて、80歳の老人は20歳の若者に比べ海馬の神経細胞数が20%も少ないそうです。

 

 

 

 

・記憶力を高めるための方法

 ニューロンシナプスの数は増やすことができます。そしてトレーニングによって記憶力を効率よく高めることができるので、その方法をご紹介したいと思います。

 覚えたいことは何度も繰り返すことで脳に定着することをご紹介してきました。シナプスは暗記などをして頭を使えば使うほど発達します。

 

・人に説明する、教えることで記憶力が上がる

【ラーニングピラミッド】というものをご存知でしょうか?

 ラーニングピラミッドはアメリカ国立訓練研究所の研究により発表され、学習方法による平均学習定着率の関係が「ラーニングピラミッド」という図で表すことができます。

Lecture(講義)…5%

Reading(読書)…10%

Audiovisual(視聴覚)…20%

Demonstration(実演説明)…30%

Discussion Group(議論し合うグループ)…50%

Practice Doing(練習)…75%

Teaching Others(他者に教える)…90%

 

 勉強をした後は、友達や家族と話す、説明・教えることで学習の定着率を高めましょう。毎回友達などと時間が作れない場合は、1人で説明をするのも効果があります。

 なぜなら説明をするには、内容を思い出す、思い出した内容を頭の中でまとめなおす、まとめなおしたことを話す(合わせて図などを書いても良いです)、自分の説明を聴覚を使い聞くことが必要になります。このように多くの神経を刺激することによって学習定着率が高まるのです。

 覚えた内容を説明するためには完璧に理解をしていなければ困難です。もし説明をする際にうまく説明できない、不明瞭な点が見つかれば、再度覚え直しをすればより記憶の定着をはかることができます。

  他にもハーバード大学の研究では有酸素運動によって生じるBDNFという物質がニューロンの生成を促進するということが判明しています。ニューロンの生成はストレスで抑制されるので、ストレスを溜めないことも大切です。

 

 

 

 

・おまけ:作られる記憶

  初めての経験なのに、前にも同じことが会ったような気がする。考えれば考えるほど、確信が深まる。これをデジャブー(既視感)といいます。この現象は記憶の錯覚により起こります。

 記憶にあるからといって全てが事実とは限りません。記憶の中だけでストーリーが出来上がってしまうこともあります。アメリカでは作られた記憶がもとで、裁判になった事例もあるようです。

 

 とある女性が心理療法を受けているうちに、むかし父親にレイプされ、2度も人工中絶を受けていたことを思い出しました。ところが、医者が診察してみると、彼女は男性経験はなく、もちろん妊娠などしたことはありませんでした。このように自分の願いや不安、イメージ、人からの誘導質問や暗示などによって、記憶が作られてしまうことがあるのです。

 

 

 

・さいごに

 記憶力というものは訓練により向上します。ある実験では人間はリラックスしていた方が記憶力が高まることがわかっています。ですので、リラックスモードで集中して、楽しみながら繰り返し復習することで記憶力が向上します。常に新しい知識を取り入れたり、自分なりに工夫をして、記憶力向上を図ってみてはいかがでしょうか。

 

 

 

 

人生を変える 記録の力

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